冬本番となりコートを羽織り、マフラーを巻いていた。
首に巻きつくマフラーは恭ちゃんのものだ。





相変わらず学校へ迎えに来る恭ちゃん。
ただ今日は6限目に

『ごめん!今日、急用なんだ!迎えに行けない…本当ごめんね…』

とメールが来ていた。






下校の時間は日が落ち、とても寒かった。
今日は1人だ。
大きな交差点。信号待ちで足止めされていた。
目の前の大通りをミントグリーンの車が横切る。





心臓が止まるかと思った。








そしてすぐにタクシーをつかまえた。


『海岸まで…』


制服でタクシーをつかまえた私を運転手さんは不思議な目で見ていた。



思い出の場所が近付く。
別れてから来る初めての海岸。
いつも2人だった。
誰もいない、2人の思い出の場所。

腰を下ろし、晃を思い出す。

初めて出会った時、初めて気持ちが通じあった時、初めてのキス、それから別れ…
一つずつ丁寧に思い出した。



携帯を開き、アドレス帳を呼び出す。あれから一度もかけたことがなかった。
やっぱりハートマークがついたままだった。






『元気?』と入力し、送信した。




すぐに携帯がなった。
画面には







『このメールアドレスは無効です』









本当に終わったんだ…







きっと晃はオーストラリアで頑張ってるんだ。
進めないのは私だけ。
私だけがこの海岸で立ち止まっている。

変われなかったのは私自身だったかもしれない。

晃は変わったんだ。
前に進んでるんだ。
夢を追いかけてるんだ。













突然、暗がりから誰かが近付く。
誰もいない。危険だ。私は黙って俯く。

どんどん影が近付いていた。
どうしよう。

そう思い足を向けた先を見て驚いた。










『いた!』









恭ちゃんが笑った。
冬の海風が頬にささった。