春だった。 「はぁるぅ!はっやくぅ!!」 信号が赤に変わり、横断歩道の手前で小さく足踏みしていた春が 「ごめーんっ!」 と、笑いながら言った、その時だった。 ガシャン、という不快音が私の耳に届いた。 重い何かがぶつかり合って こすれて潰しあって、悲惨な現状が出来上がった。 目の前で、交通事故が起きた。 それは一瞬のことで理解するのに少し時間がかかってしまった。 そこで、私は気がつく。 春が、いない。