うサぎさン。


「今日も特に伝えなくちゃいけない予定はありません〜。雨なので、静かに過ごすこと。以上、かいさ〜ん。」

緩い合図に、クラスは緩く解散する。

「なあ、千尋」

後ろから声が聞こえた。
きっと、篠田 夏希だ。
男子の中で私を唯一千尋、と呼ぶ人。
皆ちいって呼ぶから、千尋って呼ばれると絶対的に夏希になる。

なので、私は振り向かず、

「なに、夏希」

と聞いた。

「うさぎ館って、知ってるか?」

「当たり前でしょ、有名すぎて。うさぎ館の話なら怖がらないよ?」

そこで私は始めて後ろを向いた。
すると、ニヤニヤした夏希が

「本当かよ。」

と言った。

「何よ。そんな話、皆知ってるわ。」

「いいや、お前は多分勘違いしてる。」

え?