冬休みに入り、新たな年を迎えて程なく、りおんの「予言」通り、琉魅花(るみか)と名付けられた鏡花の娘が生まれた――。


夏休みには、国に里帰りしたりしていたインターナショナルクラスの魔法少女達だが、エレノア――つまり評議院の出国禁止の通達により事実上その行動は制限され、違反すればりおんと同様の処分が課せられる――。


監理局の抗議も虚しく、評議院の闇の実行支配力が凄みを増す――。


クラスを代表して、退院した鏡花の家に出産の御祝いに赴いたひばりがその時撮影し、全員のスマートフォンに送信した琉魅花の佇まいが、悶とした少女達の背景をほんの僅かな時間、癒しと幸福な情景に塗り替える――。








「――――はぁ」


冬の冷気故の鮮明さを増した東京の街灯りを霞ませる、気だるいエレノアの魂――。


親しい友人も、できた事もない恋人もいない「見知らぬ」国の日本――。


評議院の「密命」の蜜を美しく躰から滲ませるエレノアに、監理局内での「味方」は少ない――。


唯一の「拠り所」である妹のリンスロットにも立場上、一定の心の距離を保たなければならない切ない感覚――。


与えられた高層マンションの最上階住居――英国の誇り、しかし都内と自身の腕では性能を引き出せないジャガーFタイプクーペ――自動的に振り込まれる必要以上の「果実」――。


そのどれも、エレノアを「潤す」要素ではない――。


哀れみと重圧の「施し」――。