「って話なんだが、おーいっ、りおん聞いているか――」


「うーぅ――う、うぁああ――ついうとうとしちゃって――」


「せっかく、ソフトフォーカスの回想映像と切な気な音楽と共にこの世界の真実の一端を語った訳だが、どの部分から寝ていた――」


「うーん、角砂糖が何千兆円とか言う所までは何とか――」


「か、肝心なエピソードをスルーするとは、さすがに適当魔法少女と言うべきか――」


「そーでなくて――そんなシリアスな話を風呂場で披露する事自体、滑稽だよ――そういうお話は、然るべき場所とタイミングでそれこそリンスやひばり、皆の前で話さなきゃ――」


言いながらりおんはバスタブを出て鏡と対峙し、シャワー水栓のボタンを押す――。


ダイヤルで温度を「適温」に調節すると眼鏡を外し、少し伸びた黒髪を濡らす――。


「うーむ、私も少し拙速だったか――」


「いやいや、ステッキさんの気持ちもわかるよ――主人公はそういうグロい過去話も知っとかなきゃならないからね――」


ちょっと落ち込み気味のステッキさんを励ます様に、軽く声を弾ませ、ノンシリコンシャンプーをりおんは髪に馴染ませる――。


「わかってくれれば――それでいい――」


「いえいえ、どういたしまして――それでねステッキさん、湯気でぼんやりしているけど、少女の裸を視姦する行為は、色んな条例に違反しているよね――」


「ギクッ――い、いやぁ私は大人だからね――少女にリビドーは感じないよ――」


「ふーん――まっ、見物料金は請求するけどね――」


「り、りおん――色々とすまんな――」


「いいよ、別に――」


神妙なステッキさんの沈んだ声に「素直」に応えるりおん――。




「いつの時代も、少女は崇拝され、汚され、犠牲となる――それが定めなのかな私達の――」


シャワーの音に紛れ、りおんは呟き、馴染ませたシャンプーを泡立て「定め」を頭皮から絞り出す様に指を動かし「汚染」した泡を洗い流してゆく――。