『ただいまー』
「三名日駅」から「高塚駅」まで約20分をかけて移動し、それから約10分かけて家まで帰ってきた。
最近は、ようやく毎日の通学にも慣れてきた。
始めの頃は、身体と共に疲れ果てながら学校まで向かっていた。
それだけならまだしも、満員電車の電車に当たると、人口密度が多すぎて気持ち悪くなってしまう。
ただでさえ、乗り物には酔いやすい体質なのに、あの、人の汗や体臭が入り交じっている空気にはとてもじゃないが、長居は出来ない。
ドアを開けると、玄関には二足の靴が並べてあった。
一つは、まだ真新しく、青を基調とした爽やかな色合いのスニーカーだ。
このスニーカーは、最近新しくしたと言っていた兄の律(リツ)のだろう。
もう一つの靴は、女の子らしいピンクを基調としたパンプスだ。
この靴の持ち主は、兄の彼女の智晴(チハル)だと私は一目で分かった。
『智晴さん、来てるんだ…。』

