『ねぇ、結香の初恋っていつだったの?』
お昼休み、私は友達の夢原羽美(ユメハラ ウミ)と一緒にお弁当を食べていた。
羽美には、他校に彼氏がいる。
中学の卒業式の時に、告白されたと言っていた。
付き合って、まだ一年未満のラブラブカップルで、よく羽美から彼氏の惚気を聞かされる…。
それは、別に嫌な事だとは思っていない。
彼氏の事を話している、羽美の顔は「恋」をしている顔だからだ。
それに、友達が幸せだと、何故か私も幸せな気持ちになる。
だが、しいて言うならば私に「初恋」や「男性のタイプ」などのいわゆる「恋バナ」の類の話はあまり持ち出て欲しくはないとは思っている。
何故なら!
「恋」を知らない私が、「恋」について語れる訳がない!
そもそも、恋愛経験者と恋愛未経験者が「恋」について語った所で、まとめな対談になるのかさえいまいち分からない…。
それに、羽美に「初恋」がまだなんて言ったら驚かれてしまうのは分かっているし、「変わっている」と思われてしまうかもしれない…。
『初恋?』
『うん!結香はいつだった?私は小2だったよ。』
平然と言う羽美に、私は驚きを禁じ得なかった。
『小2!?早くない?』
驚いた…。
小2で、「初恋』って…。
『え!?普通じゃない?幼稚園の時が初恋って子もいるよ。』
(皆、早い…。)
自分は自分。
人は人。
そう思っているのに、こうも人との差を感じてしまうと、自分が恥ずかしくなる。
自分だけ、異常な人間のように思ってしまう…。
『結香はー?』
俯きながら、そう考えていたから羽美の言葉に体が跳ねてしまった。
『結香は、大人しそうだからさー、中学の時ぐらい?』と羽美は紙パックのジュースを飲みながら言った。
『わ、私は…』
…言いたくない。
言って、羽美に驚かれたり、引かれたりされないかな…。
『あ、あのね…『キーコンカーコン♪』
私の言葉は、お昼休みの終わりを告げるチャイムによって遮られてしまった。
『…じゃ、じゃあ私席に戻るね!も、もうすぐで5限も始まるから!
私はチャイムを理由に、逃げるように自分の席へと戻っていった。
『あ、ちょっと、結香!?』

