ほんの…二、三歩。 たったそれだけ。 カツ… 一歩。 景色が少し広くなる。 カツ… 二歩。 風が弱々しく吹く。 「…………」 次だ。 ものすごく、落ち着く。 あの日は、壊れるんじゃないかっていうぐらい、心臓がうるさかったのに。 最後の一歩を、踏み出そうとした。 ――バンッ… 扉が乱暴に開く音。 「まって…!」 振り向かなくたってわかる。 彼女に似ている、あの子。