【短編】お前、奪うから。



触れるだけのキスをしたあと、数センチ離れた朔の表情は、満足げなイジワルな笑顔。


まるで驚いて、顔が真っ赤になってしまったあたしを楽しんでいるかのようだ。



「……大声出さねぇの?」

「………どうして……キスなんか…したの?」

「……結衣が面白いから」

「……面白かったらキスするの?」

「………」

「……バカにするの、いい加減にしてよ。朔、いっつもそう。……わがままで、自分勝手で、口だって態度だって悪いし、今日だって強引にここに連れてきて、強引に……キスなんかして。

……あたし、もう先輩の彼女なんだよ?もう朔には構ってあげれないんだから」



そう言うと、朔の表情はイジワルに笑っていた顔から無表情に変わる。


少し言いすぎてしまっただろうかと、心配になっていると、朔はまたニヤッと笑う。


「……それって前向きに捉えてもいいの?」

「……え…?」

「……『わがままで、自分勝手で、口も態度も悪い』……結衣が俺のことちゃんと見てくれてるって、そういう意味でとってい?」


イジワルに笑う朔はなんだか余裕ぶってる。