手首は握られたままだし、壁と朔に挟まれてしまったあたしは簡単に逃げることなんて出来ない。
どうして朔がこんなことするのかわからなかったけど、朔になんか負けたくないあたしは、朔をグッと睨みつけた。
そんなあたしを見てか、朔がふふっとイジワルに笑う。
「……生意気」
「……腕、痛い。……離して」
「……やだ」
「……じゃあ大声出すから」
「……出せば?」
生意気なのは、朔のほうだ。
イジワルに笑ったり、澄ましたり、余裕ぶったり、急に怒ったり。
生意気すぎて、ムカつく。
朔が握りしめている手の力を抜いてくれない代わりに、宣言した通り、大声を出してやろうと、息を吸い込んだ瞬間だった。
「……っん……」
やっぱり朔はいちいちムカつく。
……キスしてなんか頼んでない。
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