ここに一葉姉さんが登場するとなると、嫌な予感しかしないなあ…。

心の中で毒づいたあたしに、
「さくらちゃんのところから映画のチケット2枚もらってきたんだけど」

一葉姉さんは九重兄さんに手の中の映画のチケットを見せた。

ちなみに、さくらとはこの横町の片隅で小さなバーを営業しているママの名前である。

一葉姉さんとは同い年で、お父さんは常連客として彼女と仲良くしている。

「おー、2枚か」

九重兄さんは一葉姉さんからチケットを受け取ると、2枚をあたしに渡してきた。

…どう言うことだ?

1枚はあたしと言うのはわかるけど。

「もう1枚はいらないから」

チケット1枚を返そうとしたあたしに、
「それで太くんと一緒に映画に行ってきたらいいんじゃない?」

九重兄さんが返してきた。