彼と逢うのは、いつものこの場所。何故この喫茶店なのだろうと初めて誘われた時には疑問を抱いたが、今ではすっかり此処はお決まりの場だ。



「真歩、この喫茶店で働いてたことあるだろ」



私と久々に逢った彼は、開口一番にこう聞いてきた。突然な質問に私は



「どうしたの、突然だね」



と、極普通の返しをする。なんで知っているの、と付け足した。そう、彼と逢うのがすっかりお馴染みとなったこの喫茶店は、何を隠そう私の初めてのバイト先。入れ代わりが激しい所為か、知っている店員は1人も居ないけれど……。



「俺、此処で真歩と逢ったことあるんだ」



「えっ……?」



嘘だ、とも。ホントに、とも。その次の言葉が出てこなくて。私の反応を見るなり蒼君は、その様子だとやっぱり覚えてねーみてーだな、と零した。



「私と、蒼君。此処で逢ってたの……?」



「おー、アレは確か2年前だ」



2年前とは、私が此処で働いていた時期だ。



「前に真歩がくれた手紙に、あの時初めてあった~みたいなこと書いてあったが。初めて会ったのはあの道路じゃねぇ。此処だ」



前に車の中で言った矛盾点ってのは、このことだ。と彼は言った。



……蒼君には悪いけれど、一生懸命記憶を辿っても、蒼君との『本当』の出会いを思い出せずにいる私。