ま、遊びはこれぐらいにして、と彼が言う。ふと時計に目をやれば、いい時間。それに蒼君も気づいたようで。



「悪い、送ってやりてぇが、酒飲んじまったから……」



失敗したな、と彼は罰が悪そうに言う。



「いいよ、そんなの。いつも悪いし、この時間だったらまだバスあるから、それで帰るよ」



「金出すから、タクシー乗ってけよ」



「いやいや、悪いって」



――けっきょく、バス停まで蒼君が歩きで送ってくれるということで落ち着いた。彼に、言いたいこと伝えたいことが、ずっとあった。でも、切り出すことが中々出来ずにいて。それに、自分からアピールするのも好きではない……。



明日は、私の誕生日。



「ちょっと冷えるな」



「うん」



さり気なく、伝えたい。どうする、何て言おう。『明日、私の誕生日なんだー』は、唐突すぎるか。おめでとうの一言でもいいから、彼に祝われたい。



「着いたな。バス来るまで居るわ」



「ありがとう」



言え、今しかないよ、私。














すると、バスはすぐに来てしまって。普段なら嬉しいが、今は別。



バスに乗り込み、座席に座り彼に窓越しに手を振る。



……けっきょく、言えなかったな。




明日は、誕生日だけど仕事だ。良い歳だし、誕生日だからと言っていつも何かするわけでもないし。いつも通りに、過ごそうか。