「み、美桜?」



驚いたような花音の声。


でも私は否定もせずに押し黙った。




大体、ひーくんとのいい思い出なんてひとつも無いんだよ!


虫が苦手って知ってるのにセミを投げてくるわ、


自分の嫌いなおかずは全部私のお皿に入れてくるし(好き嫌いも激しいし)、


自分に頼まれたことなのに全て私に丸投げだったり、


強引でワガママで…


どれだけ私が迷惑かけられてきたか!



「これから先、一生関わりたくなかったのに!
まさか、隣に引っ越してくるなんて…
もうトラウマでしかないのに」


「あー、よしよし!
美桜がここまで人を毛嫌いするなんて珍しいね?」



そりゃひーくん一人だけなら多少は…ホントに多少は我慢出来たかもしれない。


けど、苦手なのはひーくんだけじゃなくて…




「藤堂直人ってこのクラスよね?」



その声に耳を塞ぎたくなった。


逃げ出したくなった。