*直人side
それは…一瞬の出来事だった。
掠めたように触れた唇。
美桜のあからさまに驚いた顔。
「ぅわあああぁぁぁぁん!!」
斯く言う俺も放心状態で、突き飛ばされた衝撃でハッと我に返った。
「美桜!おい、開けろ!」
急いであいつの部屋の前に行く。
ドアを叩いても呼び掛けても返事は返って来ず…
しばらく同じようにしていたが、どうすれば良いか分からず立ち尽くしていた。
「ごめん…」
暗闇の中で聞こえた小さな一言。
あまりにも辛そうな声…
その短い言葉に、どれだけの重さが入っているかが伝わってくる。
何…謝ってんだよっ……