寄せられた勢いのままに、すっぽりと私は大和の腕の中に収まる。
そう。このシーンには姫と王子の『抱擁』の場面がある…
こうぎゅっと抱き締められていると、海でのことを思い出しちゃう。
リハーサルの時はフリだけだったしね…
「姫……貴女と共に生きていきたい…」
大和は台詞を言うと、私を抱き締める力を強めた。
きっと…見ているだけでドキドキしてしまう場面なんだろう。
私が傍観者ならそうだと思うから。
でも…今の私にはときめきなんて感じられる余裕なんて全然なくて…
胸が締め付けられる。
演技だって分かってても絶対に花音は傷付いてるから。
フラッシュバックする、あの時の場面…
私が坂口先生となるちゃんのキスを見てしまった時みたいに…きっと……
「私と…契りを交わして下さいますか?」
読み合わせの時、練習の時、そしてこの予行演習。
あの子は一体何回傷付いたのかな?
聞いたところで本音なんて言ってはくれなかったけど…

