10月に入り劇も本格的な練習が始まっていた。


読み合わせの時は放課後だけだったが、今は朝も集まる羽目に…


勝手に選ばれただけなのによ…
マジでいい迷惑だ。



「眞中さん。今の場面、もう一度お願い出来る?」


「は、はい!」



美桜にそう告げたのは演劇部の部長。


名前は…確か何とか沼だったっけか?


とにかく主役の美桜に対しての演技指導は厳しい。
普通の沙汰じゃない。


まぁ毎年劇の精度が上がっていっているようだし、下手な芝居は出来ないんだろうけどさ?



「あぁ…!私は…一体どうすればいいの?」



正直、演技の幅を利かせたいなら演劇部が劇をすれば良いんじゃね…と俺は思う。


でも美桜は違う。


そんな愚痴も一切言わずに練習に打ち込んでいる。


負けん気が強いんだよな、あいつは…


いつも一生懸命で努力家で。


けど俺的にはもっと…弱い所、見せて欲しいんだけど……