「ご丁寧にありがとね?」
「いえ…本当は母と来たかったのですが、何分仕事が忙しくて……」
悲しげな美桜の笑顔…
何だろう。
俺はこの時こいつの表情が、やけに気になってしょうがなかった。
「まな……あっ、下の名前は何て言うのかしら?」
「え……み、美桜です!」
「じゃあ…美桜ちゃん。美桜ちゃんのお母さんはお忙しい方なの?」
いきなりの母さんの問いにきょとんとする美桜。
でも少しすると、眉を下げてふわりと笑ってみせた。
「はい。母は世界中を飛び回るデザイナーなんです……だから、家にいることはほとんどありません」
「そうなの……えと、他にご家族は?」
「父がいたのですが、………小さい頃に亡くなってしまって……家にはほぼ私一人なんです」
かなり言いづらいであろう話題。
それなのに、少し詰まらせてはいたけど淡々とこいつは話して退けた。
もう何回と周りに説明してきたんだろう。
それぐらいに…手慣れた様子で……

