「おっ、こっちこっち」



イルカショーが行われる場所へ向かう途中で直人に会った。

水槽に照らされた光で顔はよく見えない…



「いやー、結構遠くまで流されて焦ったらよぉ。ショーの所ってすぐそこだよね?」



さらに近くへ言って直人に話し掛ける。

大丈夫。いつもと変わらずに、話せてる…


自分ではそのつもりだった。
でも直人は、いつもより真剣な顔付きになって…



「美桜」


「な、何…?」


「…お前、なんで泣いてんの?」


「え?」



直人は何を言ってるんだか。
私は別に泣いてなんか……!



目許を指で触れると涙が溜まっていた。
しかも流れた跡も…


気付かない位に、動揺してたんだ…



「お、おかしいな。目にゴミでも入ったのかな?逆まつ毛とかかも…」



急いでタオルハンカチで拭いながらそうは言ってみるけれど、どう考えたってそうじゃない事は分かる。


特に直人は勘が鋭いし…