「あっ…」



返事を聞くこともなく、言いたいことだけ言うと直人は再び歩きはじめた。



もう!
あやつは自分勝手すぎやしませんかね、ホントに!!



『無防備すぎる』


『危機感をもて』



ポンッと直人に言われたフレーズが頭に浮かぶ。


じゃあ、さっきのは…自覚させる為にわざと…?



うーんと考えあぐねると、不意に唇が触れそうになった瞬間がフィードバックしてくる。


その場面に自分でも分かる位にカァァァァっと顔が赤くなった。



…いやいや。


そうだとしても他にやり方ってもんがあるでしょうが!



腹立たしい気持ちをぶつけるように、少し遠くなった背中を睨む。



だけど、未だに残る手首の熱を感じて…鼓動がトクンと小さく鳴った。