ひとりごと。

台風が通り過ぎた
昼間の快晴の下
強風に飛ばされた落とし物
追いかけて走るおばあさん。

誰かの期待にも気付かず
落とし物の上を通り過ぎる
おじいさん

イヤホンから
流れる音楽に合わせて
口パクをしてみる

風になびく
成人式のためにのばした髪
少し、鬱陶しくて耳にかける

珍しく
変わる寸前の信号
走り抜けてみる

鍵しっぽの黒猫が
日差しから逃げて車の下へ

私も真似して
日陰歩き。

風が運ぶ
金木犀の香り

日陰のコンクリートに
ひっそりと息づいた蛹。

通勤ラッシュを通り越した
スカスカな電車

今日にしかない輝きを
目にも止まらない日常を
当たり前と笑ってしまうのは
これ以上に悲しいことはないだろう。