「あ、お前…青葉?」


声がした瞬間に振り向くと


「お前は…………」



「大倉だけど、何してんだよ?上がってくか?」


「どこにだよ?」


「オレの家か………菜塚の家?」


ズキッ…


「な、なんで菜塚なんだよ…?」


「いいだろ、別に。あいつらもいるし。」


「あいつら?」


「七瀬と海原だよ!」


さっき……。


まあ、大丈夫か……。


「………行ってやるよ」


「あっそー。じゃ、ついて来いよ。」


菜塚の家は、すぐそこだけど……


とりあえずついて行く。


家の目の前に来たとき…



「恵ー!早くー!」



勢いよくドアを開けて出てきたのは……


菜塚だった。


オレと目があったとき、目をそらして


さっきみたいな元気が無いのが分かった


電話して、色々言われた相手とは会いたくないのは、普通の事だ…。


「………さっきは…ごめん…。」


ボソッと菜塚は謝ってきた。


「オレは別に……」


「……もう私に関わらないで…」


「……は?」


「私……近づかないようにするから……」


「あのさ……ちょっとだけ聞かせて」


「……何の事?」


菜塚のオレを見る目は、どこか冷たさを感じた。


「オレ……何があったんだよ?」


「………黒石さんに聞けばいいじゃん」


「いや、でもキスしたらって言うから…」


「キスして聞けば?!勝手にしなよ!」


菜塚は涙目になって言った。


何なんだ?


……菜塚って…。


「葵ー?どうしたのー?」


家の奥から声がする


あ、里穂の声か。


そして菜塚はうつむいたまま



「……青葉君、さよなら。」



刃のような言葉を放った。



オレはそのまま家まで走った。


何があったか思い出したら


君は振り向いてくれるのか?


何があったか思い出したら


君は笑ってくれるのか?



………それなら



オレはキスだってしてやる。


何だっていいから。



もう一回だけでいいから


“創太”


って笑ってよ