オレは人のあまりいない校舎の裏に連れてきた。
愛梨はなぜか、いつもと違う表情を浮かべて、屋上を見つめていた。
オレがこの時にちゃんと気付いてたら………
大切な人を……守れたかもしれないのに……?
……それは、まだいいか…。
そして、愛梨は上目使いをしてオレを見た
「抱き締めてよ……。」
そう言った愛梨にオレの胸のずっと奥は
ズキッ………
ひしめくように締めつけられる音だった。
「ねぇ……抱き締めて……」
オレに寄り添ってくる愛梨。
「今じゃなくてもいいだろ……」
「創太君は……愛梨の事キライなの?」
またか…
「キライじゃねーけど、今は……。」
「早く……ねぇ、早く……!」
オレのワイシャツの袖を強く掴む
「早くしてよ………っ」
そしてオレは
愛梨を抱き締めた。
「………創太君…ずっと一緒にいようね…」
「……もういいか?」
「………………うん……。」
それに満足したような愛梨は
また屋上を見て笑った。
でも、それはオレに向けるような笑顔じゃなくて
憎しみを持ったような笑顔だった。
そして屋上を見てみたんだ。
オレは………目を疑った。

