ざわざわする人混みの中、少年少女は走った。走って走ったその先は、ある駅のホームだった。事が起きろうとも知らずにずっと走り続けた。そして...

<私たちは出会った。>

<俺たちは出会った。>

「ちょっ!遅れちゃう...やばいやばい!」

私は佐伯杏菜。青南高校に通っている高2でおっちょこちょい性格。よく道端で転ぶし、忘れ物するし、寝坊するし...もう毎日が大変。こんな自分嫌だなぁ。

「はぁ...疲れる。」

息を切らしながら走っていくと、右から走ってくるある男の子にぶつかってしまった。

ドンっ!!!

「いてっ...誰だよ。」

「いたた...って大丈夫ですか!?怪我してませんか?」

「あーまぁ、少し痛むけど大丈夫。」

「ごめんなさい!!って顔に傷があるじゃないですか!はやく手当しないと。」

「いやいや、ただのかすり傷だし、いいって。つか、そっちなんか急いでるっぽいし?はやく行かなくていい...」

「そんなのはいいんです!怪我人は黙ってついてきて下さい。」

「お、おい!ちょっと...」

~5分後~

「よし、消毒おっけー。あとは絆創膏だけだね。うん、できた! きゃー♡ハルちゃん、佐伯杏菜今日も頑張ります!!」

「は、は?なに言ってんの?」

「あ、気にしないでください。あなたじゃなくて、その絆創膏に写ってるキャラクターに言ったので^^。」

「あ、あっそ。つかさ、よくそんなもの持ってんな。」

「私、よく転ぶんで。念のために持ってるんですよ。っていつまでタメ口なんですか!初対面のひとに失礼ですよ!」

「へぇ~。あ、わりぃ。俺いつもこんな感じだから。敬語なんて使わない主義!」

「どんな主義ですかっ!そんなのありません!」

「まぁまぁ、いいじゃん。そっちだって高校生だろ?別に使わなくていいっしょ。」

「はぁ...まぁ、手当も終わったことだし先行きます。」

こいつに付き合ってたらきりがないや。はやくいこ...って思ってたら...

「あ、ちょっと待って!」

「はい?」

「パンツ...見えてる。」

「ん?...きゃああああああああ!」

「ぷぷ...ぷはははは。」

こ、こいつ!笑ってるし!!もう、なんなの!

「あ、あんた、なんなの!?どこみてんの!この変態、おたんこなす!!」

「ぷぷ...ちょ、あははは。冗談だって。みてねーよ。」

「はぁ!?こ、このおたんこなす!もう話しかけないで!」

「お、おい!」

なんなの...朝からひとにぶつかるし...変なおたんこなすに会うし...もう。って学校に遅刻しちゃう!!

私は急いでダッシュし、15分でようやく学校についたけど、結局遅刻してしまった。

「佐伯ー、今日も遅刻か。もう二年生なんだから遅刻のないように。はやく席につきなさい。」

「はい...。」

「あーんなっ!今日も遅刻?ってあれ?顔色悪いよ?なんかあった?」

この子は私の大親友の柚子。幼稚園からずっと一緒に仲良く過ごしている。柚子のお母さんが有名な和菓子屋さんを経営していて、昔からなにかとお世話になっている。ありがたいなぁ。

「さすが私の大親友~。それがね...朝から変な男の子にぶつかってね。大変だった。」

「なるほどね~そんなことがあったの...。」

柚子は私を一番知っていて、悩みごとや愚痴を最後まで聞いてくれる。このとき私は、柚子を絶対失いたくないと思った。でも、ある事がきっかけで柚子を失なってしまうとは思ってもみなかった。