クリスマスの夜。
曇谷 岳は池袋にある最高級の三つ星レストランで夕食をとっていた。
一見、贅沢三昧して喜んでいると思うが彼の表情、雰囲気は暗かった。彼だけではない。この店の全員。いや世界中の人々が今現在、かれと同じだろう。



今から二週間前に人類史上最悪なニュースが届いた。
地球の4,5倍の大きさの隕石が約97,8%の確率で地球に衝突するとの事だ。
幸い発見が早かった為、隕石の軌道を変えたり、月に移り住む計画等、様々な生存方法が考え出されている。
ならば世界中の人々は仕事なんてせずに最期かもしれない日々を大切に過ごすのが普通だ。
しかし、世界中の人々は仕事を懸命にこなしている。
これは国家の代表だけが集まる国家連合の代表。
すなわち地球の代表。【ベクター】という名を持つ人間の絶対命令によるものだった。
その理由は『我々人類の技術と頭脳があれば地球は間違いなく助かる。なので普段て変わらぬ生活を送るように』というなんとも言えないものだった。
岳は地球の何倍もある隕石から逃れられる訳ないと思い残りの人生を贅沢に生きようとこの三つ星レストランに入ったのだった。