「あれ……?」



海岸で転んだことは憶えていた。


立ち上がってみると、どこにも怪我をした様子は無い。

顔にも泥はついておらず、綺麗なものだった。


そんなことよりも――


"ここはどこ!?"


見知らぬ街に人影は無かった。



「ようこそ、坊や」



ギョッとして振り向くと、マントのような着物を着たおじいさんが立っていた。

長い杖を突き、顎に白髭を生やしている。