俺がこの学園に来たのは時季はずれな秋のことだった。

当時の俺は親の言いなり状態であったので、世間一般ではお利口ちゃんであって、真面目に過ごしていた。
確かに親に反発とかするのが面倒だから何も言わなかったが、ある事がきっかけで両親と喧嘩をしてしまった。
喧嘩の内容は――まぁ、追々あとで話そうとしよう。

そんな事があって、学校へは無理やり退学させられて強制的に通うことになったのが、

【私立四季彩学園】だった。

名前からして胡散臭い学校名だったが、今の俺の状態では通うという道しか残っていなかった。

「白銀ハルトです。中途半端な時季に転校してきましたがよろしくお願いします」

適当に且つ相手に好印象を持ってもらえる挨拶をして自席に目指して足を進めた。
それにしても、俺自身もそうだが、此処の学園の生徒は何かと目立つ。

特に髪色なんて黒髪が居るのかって言うくらい少ない。

赤、青、金、緑などとカラフルな色が揃っている。
俺自身も生まれながら持つこの銀髪が浮かないくらいだから相当だ。

あまりにも珍しい光景に驚きながら指定された席に腰を下ろす。

「あ、お隣さんって君なんだァ~これからよろしくね」

すると、横のほうから気の抜けたような声がするので振り向くと、
其処には唯一黒髪である少年が哂って話しかけてきた。

「僕の名前は黒瀬カナデって言うんだァ~」

黒瀬は他の奴とは違って少し間の抜けた奴だったことも覚えている。

「隣の席になったのも何かの縁だしィ~これからもよろしくね~えっと、白川くん」


「あぁ、此方こそって、俺の名前は白銀な、し、ろ、が、ねな」


「あれ~間違えちゃった?ごめんね、僕物覚えが悪くてェ~今度から気をつけるね白金くん」


「お前、それワザとか?」


兎に角、物覚えが凄く悪い。
転入当初から悪かったが今、一緒に居ても俺の苗字を間違えることが多々ある。


「ねぇ~何思い出にふけているのォ~?」


「・・・・・・いや、転入当初のことを思い出したんだ」


「あぁ~僕と初めてあった日のことでしょ~?」


「お前がしっかりと俺の名前を覚えてもらうのに何日掛かったと思っているんだよ!」


「大丈夫だよ~今ではハルトって呼んでいるから間違えないよォ~」


ヘラヘラと笑うカナデを見て確かにと思いため息を落とす。


「じゃあ、俺の名前は言えるか黒瀬カナデくん?」


「流石に間違えないよォ~白峰ハルトでしょ~」


「大間違えだ、このバカナデ」

カナデに向かって利き手を思いっきり振り落とした。
その丁度にカナデの頭に綺麗に決まった。

「いったいなァ~暴力反対だよハルト~」


「何時まで経っても人の名前を覚えられない奴に言われてくねぇよ」


「うぅ~酷いなァ~」


「ほら、ボケっとしてねぇで、昼飯食いにいくぞ」


「・・・・・・ハルトってそういう所が優しいよね」


"僕らをあんな目で見てくれない所とか"


「何か言ったか?」


「ううん、何でも無いよォ~僕今日はクリームパンが食べたいよォ~」


「毎回俺が奢ってやっているみたいに言うな」


この学園は少し他の奴とは違う奴らが集まっている。
それは決して望まれない奴が多いだろう。

俺もその一人に過ぎないに決まっている。

だって、この学園はそういう奴らが集まるところだから。

俺はそのうちの一人でカナデも一人でしかすぎない。


「僕は、外の景色を見たことが無いんだよォ~」


「確かに、此処は少し・・・・・」


≪窮屈なところだなぁ≫


「でも、ハルトに会えた事は嬉しいよォ~」


「だったら、さっさと人の名前を覚えろよ」


「分かっているよォ~あれでしょ~白波くんでしょ~?」


「白銀だって言っているだろ、バカナデ」