薄暗くなってきた室内。それすらもわからないほど、私は集中していた。
次々と沸いてくるモンスターに銃口を向け、Aボタンを押して弾丸を放ち倒す。
要するに、ファーストパーソンシューティングゲームをしているのだ。
そのうち画面に表示された、ミッションクリアの文字。

「.........これも、大しておもしろくなかったわね」

コントローラーを放って、ぐっと身体を伸ばした。棚を見れば、クリアしたゲームがぎっしりと並べられている。
私はゲームが大好きだ。特に、シューティングゲーム。銃で敵を打つ爽快感がクセになるし、スリルもあって、してるときは何も考えなくていいから。
それを覚えたのは、小学1年生のとき。ゲーム会社の社長を勤めることになった父親の紹介だった。
それからというもの、ゲーム漬けの日々だ。勉強はするし、食事や入浴もするから、家族には何も言われないけれど。

だけど最近、大好きだったゲームが、つまらなくなってきた。難易度を最高にしても、相手が強いプレイヤーでも、簡単に倒せてしまうのだ。
それが解ったとたん、私はすべてが色褪せてみえた。
日常生活も、学校も、すべて。

「鎖羅。新しいゲームはもう試したかい?」
「ええ」
「おぉ、そうか。どうだった?今回のはけっこう自信があるんだ」

嬉しそうな父さん。
正直に言ってしまえば、きっと落ち込むでしょうね。
だから今までずっと、「楽しい」と嘘をついてきた。
今日もまた、違わず。

「おもしろかったわよ、とても」

これでいいの。たかがゲームじゃない。
つまらなくても、暇がつぶせればいいんだわ。
他にもやることはたくさんあるんだし。
あぁ、もうすぐテストだったわね。勉強、しようかしら。