ここにいると、夢の中を漂っているみたいな気持ちがする。





「お待たせ。――――おいで」


 彼とここにいると、まるで夢の中にいるみたいに、現実感がない。

「ほら、リリー」

 今日も拓さんは、掠れた声でそう呼びかける。それから、手を。

 私は差し伸べられた彼の大きな手をじっと見詰める。


 拓さんと、秘密の時間。


 ひんやりとしたフローリングに裸足で座り込んでいた。

 その私を見て彼は、いつも少しだけ、笑うんだ。

 それから言うの。

 リリー、こっちへおいで、って。


 部屋の中はほどよく温かくて、私の好きなお香が焚かれている。外は雨で冷たい世界だけれど、ここは守られた場所。

 それから、いつもの時間がくる。