孤独な夫婦

ここのパンはどれも美味しくて、近所では食べた事がない、という人はいない。出勤途中のサラリーマン、お昼ご飯の主婦、学校帰りの学生、様々な人がこの店にパンを買いにくる。

中でも人気なクロワッサンは売れ行きが良くて、最近では一日中クロワッサンの補充をする日も少なくない。


ほとんど、雅美の旦那さん、裕太さんが作るので私たちは仕上げや補充やレジが主な仕事だ。

忙しいがあっという間に時間が過ぎてしまうので、すごく充実した仕事をさせてもらっている。

お昼休憩になり、休憩所でご飯を食べようとドアを開けると雅美がいた。

「お疲れー!」

「はぁ。さっき裕太さんにも休んでろって言われてたでしょう。」

「働いてないじゃん。休憩室にいるじゃーん。マナそろそろ休憩入るのかなぁと思って降りて来ただけだもん。」

少し悪そうな笑みを浮かべながら、コーヒーを入れてくれた。


「マナ、今度の休み暇?」

「うん、特に予定はないかな。」

「そっか、じゃあ買い物付き合ってくれない?こんなお腹だから荷物持ってくれると助かる!もちろん、お昼はご馳走させて頂きますので!」

「いいよ!私も買いたいものあったから丁度いい。」

「たしか休み明後日だよね?じゃあよろしくね!」

話してるうちに休憩時間が無くなって来たので、雅美はまた自宅に戻り私もご飯を済ませ仕事に戻った。

私は5時までの勤務時間だったが、今日はそんなに忙しくなかったので、たまには、という事で4時に上がらせてくれた。