少し肌寒い季節、その日は朝から雨が降っていて起きて少しがっかりしたのを覚えている。カーテンを開けて少し小さくため息をつく。


「もう、昨日まではあんなに天気良かったのに、なんで今日に限って雨が降るのよ。」

寝起きで機嫌が悪いのもあるが、朝からどんよりした空を見て更に気分が冴えなくなる。だが、今日はそんな事を言ってられない。ベッドから出て身支度をしようと思っていた矢先、一階から少し甲高い声が聞こえてきた。

「まなみー!早く起きなさい!間に合わなくなるわよ!あんた今日は遅刻してらんないのよー!!」

「分かってるー!今行くから!」

毎日大きな声で起こしてくれる母の声に名残惜しさを感じながら、寝巻きからワンピースに着替える。

「とうとうこの日が来たんだね...。」


とんとんと、歩き慣れた階段を降りると母と父、そして2人の兄は朝ごはんを食べている。今日はなんだかいつもよりも豪華だ。そうか、当たり前のように食べていた母の朝ごはんも今日が最後なんだと実感する。


「何ボケっとしてるのよ。早く食べちゃいなさい。式の最中はご飯食べる暇なんてないんだから、朝しっかり食べないともたないわよ!」


母はそう言いながら慌ただしくご飯を食べ、早く片付けたそうにしている。


「うん、でもあんまり食べるとドレスがキツくなりそうだから、ご飯少なめでいいや。」


そう言うと、母は少し笑いながら、早く食べなさいとご飯とお味噌汁をテーブルに出してくれた。


この朝ごはんを食べたら私は、母と父と三人で式場に向かう。兄達は少し後から来るそうだ。


朝から雨が降り、地面が濡れて空もどんよりした今日は、私の晴れの日、結婚式の日だ。