学校が終わった。
物珍しげに皆は私を見ていた。
初めて屋上へ行った。
今日、初めて、先生と話をした。
悩み事は話して欲しい、と言われた。
初めて

言われた。


さぁこれから街に行ってみよう。
これから…最後に。
初めて行く街に。


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初めて、人に道を聞いた。
初めて人に逃げられた。
そして初めて…人の為に役に立つことができたかもしれない。


初めて来た人がたくさんいる場所。
煩いと感じた。
暖かいと感じた。

大きな声で誰かがさけぶ。
叫んでいる。
誰なのだろう。
そう感じ、遠くを見た。


___男の子が、泣いている。

上を見上げて泣いている。
反射的に、私も上を見上げた。

上から、大きな光るものが落ちてきている。

それに皆は気づいていない。

気づいていないはずはないだろう。
あんなに大きな物が落ちてきているのだから。

気づけば走り出していた。
何かを感じて走ったわけではない。
ただ、無感情のまま走り続けていた。

なにかの使命に駆られるかのように。
目の前にいた少年を押し出した。

目の前に。目の前に。
大きな尖った硝子が。
迫っている。

あ。

と思った時には遅かった。
一瞬チクリとした痛みが腹部を襲ったかと思えば、それは一瞬にして
全身の神経をかけめぐった。

…目を開く余裕だけは残っていた。

槍のように尖った硝子に串刺しになっている私の身体から変な音がする。
なにかが軋むような、崩れていくような音。

声をあげられないほどの痛みだが、不思議と恐怖はない。
私はあの少年を助ける事ができたのだろうか。

辺りを見回してみるが、あの少年はもうどこにもいなかった。

泣いていた少年を見たとき私は
昔の私を思い出した。

炎が包む車を目の前に、
ただひたすら泣いていた。
母親が燃え盛る車の中から私に叫ぶ。
「逃げなさい!逃げなさい!」と。

何も出来ずに立ち尽くしていた自分の姿を思い出し、突き刺さった身体を
動かす力もなく、
ただひたすら泣いていた。















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