その後、私達三人は第一訓練棟へ向かった。
「整列!!」
私の姿に気付いた隊員が集合をかける。
特攻隊 約600人が、綺麗に列に並んだ。
私は、その光景を高台から眺めていた。
「今日から訓練を開始する!初めての者も手加減無しだ。ついてこれない者は、辞退するが良い。では…解散!!」
彼らは動きを揃えて敬礼をすると、元の場所へ駆け足で移動した。
この特攻隊にも、専属の教官がいる。
銃や大砲の扱い方の専門家や、格闘技を教える教官など、攻撃中心の部門を習う。
それも特攻隊となるとレベルが違う。
だから、途中で挫折する者もいるはずだ。
その中でも頑張りぬいた者だけが、本当の戦いで武器を持てる。
特攻隊になれたからって、浮かれている場合じゃないのだ。
「…おいっ 隊長!!聞いてんのか!?」
ハッとして高台の真下を見下ろすと、小さな男の子がこちらを見上げていた。
「少年。私に何か用か?」
そう聞くと、さらに少年の目つきが恐ろしくなった。
「用も何も…俺と勝負しろ!!」
その瞬間、周りで特訓を受けていた隊員や教官の動きが止まった。
そして、少年に注目する。
「……ちょっと、あんた!!隊長に失礼よ!とっとと失せなさい このチビ!!」
朝 会ったばかりのリズが、少年を罵る。
「うるせえ!!メスブタは黙ってろ!」
「はぁ??誰がブタですって!? 年下のくせして生意気な奴!!」
二人の言い争いは、だんたんとエスカレートしていった。
周りは、唖然として彼らを見ている。
私もどう対応していいのか分からず、突っ立っているばかりだった。
「どっか行けよ メスゴリラ!!」
「うっざ!!あんたこそノミの分際で……」
「お前ら いい加減にしろ」
その時、後ろから聞こえた低い声がリズの声を遮った。
初めて聞く声にビックリして、後ろを振り向く。
やっぱり、その声の持ち主はクレイグだった。
あまりの恐ろしさに、二人もこっちを向いて固まっている。
そして、しばらくの沈黙を破ったのもクレイグだった。
「隊長の前で騒ぐな」
彼の一言はとても効果的で、二人も何も言い返せなかった。
「ありがとう。クレイグ」
私は 小さな声でそう呟いて、もう一度二人を見下ろした。