「隊長!!おはようございます!」
「あ、ああ……おはよう?」
朝からのこのテンションに、私はついて行けなかった。
隊長になってから、3日目の朝。
「隊長!朝食は私がご用意致します!」
生活棟の玄関のど真ん中で、元気良く声を張る隊員。
彼女の名前は 確か…リズと言ったかな?
たぶん、年下の17歳。
片方にだけツインテールして、ちょっと巻いてある髪が『最近の若者』オーラを出している。
「…気持ちはありがたいが、朝食は大丈夫だ。うちには専属コックがいてな。もう済ませてある」
そう言うと、彼女は残念そうに肩を落とした。
それから、やっと私の後ろに気付いたようで ジーッと二人を睨みつけた。
これには、ルーサーもクレイグも苦笑い。
「ふーん。貴方達が噂の世話役さん?…予想と全然違ったわ。こっちの大きな人はまだしも、隣の細い奴。まるで女の子じゃない。そんなんで隊員のボディーガードが務まるの?」
「……それって、僕の事?」
ルーサーはいつもの透き通った声で言った。
怒りさえも感じられない、本当に普通の声で。
それにプラス 笑顔だから、彼女も驚いていた。
これだけ言えば、キレられると思ったのだろう。
「…あいにくだが、私の世話役はボディーガードだけではない。多少の敵から身を守る事くらい自分で出来る。 それに、ルーサーは私の身の回りを気遣って、家事のほとんどをしてくれる。私は素晴らしい世話役だと思うが、どうかな?」
確かに見た目は女の子みたいで、戦えるのか疑問だけど、世話役としてはいい仕事をしてくれていると思う。
彼女は気に食わない様子だったが、睨む目つきが少し和らいだ。
「…隊長がそうおっしゃるのなら、仕方ない……でも、勘違いしないでよね!あんたを認めた訳じゃないから。オカマのお世話係さんっ!!」
それだけ言い終わると、彼女は走ってどこかへ行ってしまった。
「あははっ 僕、嫌われちゃいましたね」
「……まあ、気にする事ない」
頭をかきながら苦笑いするルーサー。
兵士にも、いろんな人がいるもんだ。
まあ…彼女が言った『オカマのお世話係さん』には、ちょっとだけ吹き出してしまいそうになったけど。
「それよりベシー様は、僕をそのように評価して下さっていたのですね!」
ルーサーはいつも以上に明るい表情になった。
彼はとても素直過ぎる。
思っている事を全部表に出すタイプだから、誰からも好かれるのだろう。
それに、器が嘘のように大きい。
「ああ。これからもよろしくな」
「はい!」
また、彼はとても幸せそうに笑った。