そう。ヴィクター・ユーステス。




15歳の時に、一緒に警察隊に入隊した。


彼とは幼い頃からの付き合いで、家族同然の存在だった。







それが、3年前……






彼はあの日に死んだ。


警察隊に入隊してから1年しかたっていなかった。










「……ヴィクターさんは、僕の先輩でもありました。彼の友人というのはベシー様の事ですね。よく話を聞いていましたよ」



ルーサーが、少ししんみりした表情で言った。



「ヴィクターと話をした事があるのか?…彼は人脈が広いのだな」



彼が私の話をしていたなんて…。


どんな事を話したんだろう?



でも、彼の話題に上がっていた事はとても嬉しく思う。






私はヴィクターの墓の前にスターチスの花束を供えた。


そして、膝をついたまま目をつぶり、心の中でたくさん彼に話かけた。









隊長に就任した事。



あのケイティさんまでも特攻隊に入隊していた事。





そうだ!あの事も話しておこう。



前に、集会の時にブロム兵長がカツラをかぶってたんだ。


あれは可笑しかった。


ブロム兵長は真剣に話していたから、みんな笑いを堪えるのに必死だったんだぞ。



あっ あと、デューイさんの白い肌にホクロが増えたらしいんだ。


街に行った時に小さな男の子がいて、デューイさんの似顔絵を描いてくれたみたいなんだが、顔に点々ばっかり描いてあったんだって。


それを聞いた時は吹き出しそうになったよ。









くだらない話かもしれないが、彼はこんな話が大好きだった。



「…本当に大切な人だったんですね」




私がゆっくり瞼を持ち上げると、ルーサーがそう言った。



「そうだな。…何度も、あの日を今日の事のように思い出す」






あの日…。



思い出したくない、出来事。


でも、決して忘れてはならない。




…その話は後々しようか。







「じゃあ、行くか」


私達は墓地を後にし、宮殿へ戻った。









その夜、私は一人 報告書をまとめた。


隊員の名簿の確認と、今後の活動内容についてなど。



「ふう。こんなに仕事が多いとは…」



でも、私には忙しいくらいがちょうどいい。


これからの充実した日々に、期待で胸がいっぱいだ。



ただ、本当の目的を忘れてはならない。





奴らの正体を暴く事。


あの日現れた、黒い影の正体を…。