「それより、もう既に隊長就任の情報が回っているとは…」


ルーサーが驚いた表情をした。



情報がすぐ回るのは、親任式の日に宮殿から新聞が配られ、そこに名簿か何かが書いてあったからだろう。


この国の情報は、全て光の速さで広まる と言われるくらいだからな。








「ルーサー、クレイグ。ちょっといいか?」



私は馬から降り、通りの花屋に寄った。


「…友人へのプレゼントですか?」


「ああ。久しぶりに合うからな」



ルーサーはニコニコして着いて来たが、クレイグは外で待っているらしく、何かをぼんやり眺めていた。




「どれにします?ベシー様」


花を選ぶのを楽しんでいるルーサーは、悪いけど 女子にしか見えない。


「ルーサー、花はもう決めてある。……すまない。スターチスの花束を頼む」



店員に話しかけると、花屋の彼女は慣れた手つきで花束を作り上げた。




「スターチスですか。なかなか素敵な花束ですね」


ルーサーが柔らかい笑みを浮かべて花をジッと見ていた。



スターチスの花は、とても小さくて可愛い。


小さな花がたくさん集まって、ひとつの花になっている。


細かく言うと、これは花じゃなくて がくが成長したものらしいけど。




「僕もこの花 気に入りました。誰にプレゼントなさるのか、興味がありますね」


ルーサーと目が合い、ニコッと微笑まれた。








「クレイグ、待たせて悪い」


店の外に出ると、クレイグが暇そうに馬にもたれかかっていた。




「では、行くぞ」


馬が走り始めたと同時に、花屋の彼女の声が聞こえた。



「お気をつけて!」


振り返りまではしなかったが、手を振り挨拶をした。













どれくらい馬を走らせただろうか…。


やっと目的の場所に着いた。




「ベシー様?…ここで間違えないのですか?」



ルーサーが恐る恐る尋ねた。



「ああ」


私はそれだけ言い終わると、花束を持って、その敷地の門をくぐった。




後ろの少し離れた位置から足音が聞こえるから、たぶんオロオロしながらも着いて来たのだろう。








「…ヴィクター」


そう文字が彫られた石の前で膝をつく。



「……ヴィクター? ああ。なるほど。ベシー様の友人というのは…」