朝、私はいつもより早く起き 身支度をした。
長い髪を解いて、サンダルからブーツに履き替え、白いマントを羽織る。
式典や大事な用事がある時は、必ず制服を着なければならない。
マントは隊長やお偉い様が身につけ、兵士はコートのみを着る事になっている。
コンコンッ
「ベシー様、ご用意は出来ましたか?」
部屋のドア越しに聞こえる、透き通った声。
「…あ、ああ?……すぐに行く」
ドアを開けると、そこには通称《美男子ルーサー》と《長身のクレイグ》がいた。
「……確か、君達も特攻隊だったな?わざわざお迎えか?」
そう言うと、愛想の良いルーサーがニコッと微笑んだ。
「僕は特攻隊 隊員 及び 隊長世話役に任命されました。こちらも同じく、世話役のクレイグです」
チラッとルーサーの隣に立っているクレイグを見ると、無愛想な表情でどこか一点を見つめていた。
私の世話役か…。そんな者がいたのだな。
昨日は自分の事で精一杯で、他の事は聞いていなかった。
「そうか…。よろしく」
ルーサーはまた、笑みを浮かべた。
クレイグは……相変わらずだが。
とりあえず、私は2人を連れ 東の訓練棟に向かった。
今日はここで全兵士とご対面だ。
兵士の中では4つの組織がある。
兵長は別として、指揮官、兵士、訓練員、教官だ。
兵士はさらに別れていて、私達が属する 【特攻隊】、宮殿を守る【親衛隊】、庶民の取り締まりをする【警察隊】がある。
それにはもちろん各トップがいて、今日はその挨拶などが行われる。
「やあ、フロリオ君。ご機嫌いかが?」
宮殿の地下通路の途中で声をかけてきたのは、親衛隊 隊長のデューイさん。
彼は多分、20代後半ぐらいだろう。白い肌に眼鏡がよく似合う。
彼もまた、女子からの評判がいいらしい。
「そうですね、最高の気分です。私はずっと、この日を待ちわびていましたから」
「…。あははっ そうかそうか、それは良かった。相変わらずだなあ 君も」
デューイさんは楽しそうに笑っていた。
表情を変えずに、『最高の気分』なんて言うから可笑しかったのかな?
「君達はベシーの世話役か?ずいぶん目立ってる奴らだな」
目立ってる奴ら…と言うのも、この2人は 女兵士の起こす騒ぎの中心人物だからだ。
「デューイさんの世話役は、今日は欠席ですか?」
「…いや、今は仕事を頼んでいてね」
デューイさんも、いつも世話役の2人を連れている。
「そうだ。今度、君の就任祝いでもしよう!…ああ、そうか。君はまだ お酒が飲めないんだったな」
「はい。お気持ちだけで……」
私が言い終わる前に、10時前を知らせる鐘がなった。
「そろそろ時間だな。では、また後で」
デューイさんが手を振り去って行くのを見届けて、私は会場に向かった。

