「チェイスは妻のイライザを狩人に殺された。立ち入り禁止だったはずの森に、狩人が侵入したんだ」
チェイスは、自分が死ぬ前に妻を亡くしていた…。
「そう。だから、チェイスの人間に対する怒りが爆発したのです。彼は森の結界を破り、街に出て人々を襲いました」
「…あの時の事は覚えてる」
クレイグとルーサーが少し俯いた。
当時、二人は9歳か8歳ぐらいのはずだ。
それなら覚えているだろう。
クレイグが俯くぐらいだ。きっと壮絶だっただろう。
「分かった、ありがとう。だいたいの内容が掴めた。ハンナを見張るために、国が彼女を兵士に入れたという噂も本当だったんだな」
私も、一応彼女のことは耳にしていた。
なぜ監視されているのかは今まで知らなかったが、何か事を起こしたのだろうと勝手に解釈していた。
だが、それは違う。
彼女は何もしていない。
この世界に生まれてきただけで、人から偏見を持たれてしまう、被害者なのだ。

