「当時は魔法の力を受け入れない者が多く居ました。だから、魔導士などは差別され、人々に批判されていたんです」
ルーサーが語った。
確かに、私が住んでいた南区には、魔導士なんて誰1人として居なかった。
「チェイスも周りから差別されていました。そういえば僕の母も、凄く魔導士を嫌っていましたよ…」
「あれは残酷だった。国にも相手にされない魔導士は、本当に行き場を無くしたんだ。俺の親友がそうだった」
私は、魔導士には2つの種類があると聞いた覚えがある。
1つは生まれつき力を持つ者。もう1つは自分で学び力を得る者。
前者の場合、彼等はどうすれば良かったのだろうか?
産まれてきた事を全否定されるのと同じだ。
私だったらきっと…耐えられない。
「では、チェイスも力を持っていたせいで殺されたのだな?」
「いえ…それが彼は特別だったんです」
するとルーサーの顔が険しくなった。
「彼は魔導士の中でも、飛び抜けて強い魔力を持ってました。だから、人々には大魔導士と呼ばれ、国からは森の奥に隔離されていたんです」
「しかし、その時にはすでに同じ魔導士と夫婦関係にあり、第一子のハンナを授かっていました」
クレイグも話してくれた。
「では、ハンナも同じ扱いを……」
そう考えると、キュッと胸が苦しくなった。
「そうですね…。やはり、運命は変えられないという事なんでしょうか」
ルーサーも悲しい顔をした。
「その後、結局チェイスは人々に殺される」
「…なぜ彼は殺されたんだ?教えてほしい」
クレイグは私の目をじっと見ていた。