「…隊長」
三人で入り口に立っていると、後ろから誰かが来た。
聞き覚えのある単調な話し方。
振り向くと、そこには選抜兵のハンナが本を抱えて私達を見ていた。
「やあ、ハンナ。…その本は何だ?」
ハンナは表情を変えず、私の目を見る。
「魔法…」
ま……ほう??
彼女の謎めいた感じが、もっと深刻化した。
「…ベシー様。ハンナ・アクランドは大魔導士チェイスの娘です」
ルーサーが少し小さな声で言った。
「おい、ルーサー。その話はよせ」
珍しく、クレイグが発言する。
ルーサーはどういう心情なのか、チラッとハンナを見た。
「…別にいい」
ハンナは、気にしてないというように中へ入っていった。
しかし、チェイスか……どこかで聞いた事ある名だ。
「ルーサー。聞いていい事か分からないが、チェイスとはどの様な人だ?」
そう聞くと、ルーサーもクレイグも驚いていた。
「…知りませんか?10年前の出来事を」
うーん…何のことだかさっぱり分からん。
「ルーサー、ベシー様は南区の出身……それにまだ当時は9歳だ。知らなくても可笑しくない」
今日は何だか、クレイグがよく話す。