『今から、新任式を行う!』



宮殿の敷地内にある大広場に、緊張がはしる。





新任式…



私はこの日を待ちわびていた。






名簿を眺め、もったいぶる ブラム兵長。








『ベシー・フロリオ!』



私の名が最初に呼ばれた。








『君を、特攻隊 隊長に任命する!』







驚きはしなかったが、少し緊張が解けた気がした。




肩の力がスウッ…と抜ける。



これは今までの努力の結果だと、自分を褒めてやりたい。



周りも他人事ではないようだが、式の途中は誰もピクリとも動かない。






さらに名前が挙げられる。





『…以上!それではこれで解散とする!』





ブラム兵長が名簿を読み終わると、皆が一斉に退場する。



あの、よく言う『帰るまでが遠足』みたいな感じだ。





門を出ると、話し声がザワザワと聞こえてくる。




私はしばらく、その場に立ち尽くす。



だからといって何かを考えていた訳じゃなく、ただボーッとしていたのだ。




「ベシーちゃん!あなた、やっぱり凄いわ!」




突然、背後から抱き締められて一瞬ビクッとしてしまった。


ふんわりとした大きな胸が背中に当たる感触が、なんだかくすぐったい。



「あ、ありがとうございます。……それより 離して下さいケイティさん!」


「あらまあ、照れちゃって〜」



ずっとニコニコしているケイティさんは、なぜか自分の事の様に私の隊長就任を喜んでくれた。



「あ そうだ! 私も特攻隊に選ばれたのよ〜! もう、嬉しいわ〜」




ああ。本当に幸せな人だなあ、と改めて思う。




「明日、顔合わせよね? 楽しみだわ。ベシーちゃんの晴れ舞台!」



「そういえば…そうでしたね。期待に応えられるように、頑張ります」




愛想笑いでその場をしのぎ、なんとかケイティさんから逃れた。




ケイティさんのようなタイプは、どうも慣れないらしい。









私は兵士用の生活棟に戻り、自分の部屋を確認した。



内装はシンプルで、トイレとシャワールームと料理するには水道とガスコンロがあるくらい。


その他はベッドとクローゼット、作業用の机がある。


ほとんど白と黒で統一し、使ってなくて綺麗な台所は生活感がない。



自分でも思うくらいだからね。






制服の白いマントを脱ぎ、ハンガーにかける。


一息ついてシャワーを浴び、今日は本当に早く眠れそうだ。