彼はゆっくりまぶたを持ち上げた。



「…たい……ちょう…?」



少年は、さっきの厳つい目ではなく 可愛らしい子供の目で私を見つめた。



そのギャップに、ちょっとグッとくる。




「具合はどうだ?」



その問いには答えず、やっと状況が掴めたようで、ハッと目を丸くした。




「そうか……俺、隊長に負けたんだ」



以外にもあっさりと負けを認めた彼は、本当は素直な少年なんだな…



「今回は負けてしまったが、君にはまだチャンスがある。…そうだ、年はいくつだ?」



聞くと、少年はためらったように答えた。



「…じゅう……さん」



十三 ……だと?


少々、若すぎないか?



いくら若者を戦に出させる国王の命令だとしても、十五歳未満の兵士の例は聞いた事がない。


厳しい試験を受け、それに合格しないと特攻隊には入れない。




それを、彼はクリアーしたのか?


そうだとすれば きっと、見込みがある兵士なのだろう。




「…隊長。俺の名前はディランだ。だから『少年』じゃなくて名前で呼んでくれ」



「そうか。…すまんな、ディラン」




まだベッドに横たわっているディランは少し微笑んだ。



「俺、次は絶対負けねぇ」



そう言った彼の目は輝いていた。



「望むところだ」













しばらくすると、マッダレーナ先生が戻ってきた。



「あらぁ〜、目が覚めたのねぇ」


先生はディランを見るなりそう言った。



「あったりめーだ!!だから、俺はもう帰らせてもらう!」


ベッドから飛び起きろうとしたディランが、またベッドに引き戻された。






「痛っ!!!」


彼は苦しそうに顔をしかめて、体は固まったまま掛け布団を握りしめた。



「ダメよぉ。勝手に飛び起きちゃぁ。まだぁ、治ってないんだからぁ」



先生は 仕方ないなあ と呟きながら彼の近くに寄った。





「おっ…おい!! 何すんだよ!?」


先生は彼の肩とお腹に自分の手を当てた。



「早く治るようにぃ、治療するのよぉ。だからぁ、我慢してねぇ?」



ディランが嫌がるのを無視して、先生は思いっきり手に力を入れた。



「えいっ!!……」













ボキボキボキッ!!!










「「ん??」」



私はルーサーと目を見合わせた。