「…上等だあ…!!!」
少年は鬼のような目で、私を睨んだ。
それから戦いが終わるのに5分はかからなかった。
カンカンカンッ…!
「勝者、 ベシー様!!」
ルーサーは迷いなく大声で言った。
周りは沈黙している。
少年は私の足下に、うつ伏せになって倒れていた。
気を失っているように見えるが、時々手がピクッと動く。
「…立てるか?」
その質問に返事はない。
「クレイグ。 少年を救護室まで運んでくれ」
二人はすでに、高台から降りてきていた。
クレイグは無言で少年を抱える。
「お怪我はありませんか? ベシー様」
「大丈夫だ」
過保護なルーサーが寄ってきた。
「そうですか…無事で何より。彼も気絶しているだけの様ですし、何事も起きずホッとしました」
まただ。…あの甘いフェイス。
「…そんな心配いらんっ! 私は隊長だぞ?そのくらい、ちゃんとわきまえておる」
何にイラっとしたのか自分でも分からないが、つい 強い口調になってしまった。
ルーサーはキョトンと私を見つめている。
「すまん…… 行くぞ」
私は俯きながら彼らの前を歩いた。
「大丈夫よぉ。心配ないわぁ」
救護室に着き、少年をマッダレーナ先生に預けた。
彼女は胸元だけピチピチな白衣をセクシーに着こなしている。
宮殿内のオジサマ達に人気なのも、この人の色気が凄まじいからだ。
「多分〜、もうそろそろぉ 気がつく頃だと思うんだけどなぁ」
トロトロした喋り方に、ちょっとだけイラっとする。
三十路過ぎてもまだそんな話し方で、よく通るものだ。
「…なら、もう少しここに居よう。少年と話したい事もあるしな」
「では、僕達もご一緒させていただきます」
ルーサーとクレイグも残るそうだ。
「じゃあ〜、座っててぇ。…そうだぁ!お菓子持ってくるわねぇ」
マッダレーナ先生は奥の部屋に消えて行った。
私は少年が寝ているベッドの 横の椅子に座り、ジッと彼を見つめた。
傷は少なく、本当に眠っているだけの様。
すると、また 少年の手がピクッと動いた。
「……聞こえるか?少年」