「…俺、四年前に隊長と会ったことあるんだけど。隊長は覚えてねぇのか?」
四年前? どういう事だ?
四年前というと、丁度私が 訓練員から警察隊に入隊した年だ。
「その時は、もう一人男がいたぜ。俺から見てもカッコ良くて、ずっと笑ってた」
一緒にいた男?
あっ。もしかして ヴィクターの事かな?
それより、少年の口から褒め言葉が出てきた事に驚いた。
「俺、その人に救われたんだ。隊長とその男に…」
急に語り始めた少年。
何が何だか、イマイチ状況が掴めない。
「まあ、いいや!…それより、続き続き!」
語り始めたかと思うと、また戦う姿勢に戻った。
最近、こういう事の流れの早さについて行けない…。
私、老けたかな?
そして 更に十分、十五分、三十分、一時間……と木刀をぶつけ合い続けたが、決着はつかないまま。
「…まだこりないのか?」
「ゼェ…ハァ……あったりめぇだ!! これで負けてたまるか!!」
少年はかなり息を荒く吸ったりはいたりしている。
「もう、やめておこう」
私は、彼の体も心配だった。
「……逃げる気か? 隊長のクセに」
少年は膝に手をつきながら言った。
私が逃げる?
違う。
「このまま続けても、君の攻撃が当たる事はない。だから、誰も怪我する前にやめようと言ったのだ」
すると、少年が睨みつけてきた。
「意味わかんねぇよ」
普通の人だったら、この少年の目力に負けるだろう。
だけど私は、逆に彼を睨んだ。
「良いだろう。死ぬ覚悟があるなら、戦いを続けよう…」
私がそう言うと、今まで静かに観戦していたオーディエンスがざわめきだした。
「ベシー様!!」
見上げると、ルーサーが高台から身を乗り出して叫んでいた。
「もう、やめましょう!…これ以上…無理ですよ! 人殺しになってはいけません!!」
ルーサーもつくづく心配性なんだから…。
私が本気で殺すわけない。
「戦いを続けるかどうかは、少年次第だ」
そして少年の様子を伺うと、彼は姿勢を立て直していた。

