ルーサーは急に笑顔を取り戻し、ニコッと微笑んだ。
時間はあっという間に過ぎ、午後二時五十五分。
そろそろ約束の時間だ。
私が第一訓練棟に着くと、もうすでに少年が木刀を持って待ち構えていた。
互いの武器は木刀だけなのだ。
どうやら、今日はオーディエンスがたくさん居るらしい。
彼を取り囲むように、大きな輪を作っている。たぶん、特攻隊のほとんどの隊員が集まっているのだろう。
私がその輪に近付くと、一部の人たちが中への入り口を作ってくれた。
「待ってたぜ、隊長」
中へ入ると、少年がそう言った。
少年との距離は七・八メートル程あり、輪の大きさは直径十五メートルぐらいある。
「いよいよだ…。さあ、いつでも始めて良いぜ」
開始の合図を送るのは、高台の上にいるルーサー。
あの二人はあそこからの観戦となる。
辺りが静まりかえった。
「よーい………
始めっ!!!」
いつもより威勢のある 男らしいルーサーの声で、ワアッと歓声があがった。
「おりゃぁぁぁぁぁあ!!」
すると、少年が私めがけて もの凄いスピードでかけてきた。
そして高くジャンプし、持っていた木刀を私の真上で振り下ろそうとした。
しかし、私はそれをよけ 少年は地面を叩いただけになった。
「うわお…やっぱ はえーよ、隊長」
私は話など聞くつもりはなく、素早く彼の後ろに回り、まだ地面に木刀を叩きつけたままの少年に、私の持っていた木刀を振りかざした。
「……へへっ! 俺もそんなに鈍くねぇからな!!」
後少しのところでかわされた。
でも、私はまだ3割程度の力しか発揮していない。
まだまだだ。
「ハァハァっ……くそ!!当たらねえ!!」
息を整えながら、少年が言った。
あれから十分程経っているが、未だに攻撃をくらっていない。
「そうだ 名前を聞いていなかったな。少年、名はなんと言う?」
「はあ? 今更かよ?! ってか隊長、俺の事知らないの?」
少年と離れた位置で 向かい合った。
しかめっ面でこっちを見ている。
「君とは初対面だろう? 君の噂も耳にした事はない」
すると彼は、一瞬驚いた表情を見せて、何かを考え込んでいた。

