「君達は、度胸がすわっているらしいな。それは良い意味で評価しよう」
私が話をすると、凍りついていた皆が我を取り戻し始めた。
「少年。どうしても、私と手合わせがしたいのならば覚悟を決めて来い」
すると、少年は完全に復活した。
「本当か!? 覚悟なんて…そんなの、前々からしてあるっての!」
周りの隊員も目が覚めたようで、徐々に活動に戻って行く。
「そうか…なら、日にちは早い方がいいだろう。今日の午後三時に、ここでどうだ?」
少年はヤル気満々で、大きく頷いた。
「…それで決定だな。それじゃあ、また後で会おう」
そう言って、私は訓練棟を後にした。
「大丈夫なんですか?」
訓練棟から事務局へ 書類を運びに行く途中、ルーサーが話しかけてきた。
「私は大丈夫だが…なぜだ?」
「あっ いえ、僕はあの少年の方が心配で…」
ああ、なんだ。
てっきり、私が心配されているのかと思った。
「…まあ、何とかなるだろ。少年も見た目はあんなにギャンギャンだったではないか。あれで弱かったら笑えるな」
ギャンギャン…と言うのも、髪を逆立てピアスまで開けてたからね。
どこかの不良にそっくりだ。
「そうかも知れませんが、弱いからこそ、見た目で強くなろうとしている場合もありますよ。だから始めは様子を見た方が良いかと…」
そうか、そういう可能性もあるのか。
人を見た目で判断していけないというのは、まさにこの事。
いや どれが本当かはまだ分からないんだけど。
「面白いものが見れそうだな。楽しみだ」
「ベシー様。自分が強いからといって、油断していてはダメですよ。相手は本気ですから。怪我だけはなさらないように」
ルーサーが珍しく、心配そうな顔をしている。
あのいつもの微笑みは、どこかへ行ってしまったようだ。
「…そんな顔をするな。たかが身内の力試しじゃないか」
どうしてここまで心配するのか、不思議だった。
もし 私が怪我をしたら、上の人に何か言われるのか?
いや、それはあり得ない。
怪我して注意されるなら、誰も戦えなくなるから。
「…そうですよね。ベシー様にはいらない心配でしたね。応援しています!」

