何これ、どういうこと?
どうして。
だって、彼は。
頭の中まで、痛いくらいに心臓の音が響いて何も考えられなくなった。
どうしたら、いいの。
震える手でどうにか、拳を作って、トン、と肩を叩いてもびくともしない。
もう一度叩こうとした拳はあっさり彼の手につかまり、
もともと力なく握られた指がすぐに、解けさせられた。
隙間のできたところから長い指がスルリと入りこみ、手のひらをくすぐられる。
くすぐったさで更に緩んだ私の指に、彼の指が絡んでくる。
そのまま、私の手の甲は畳に優しく押しつけられた。
その間も、せわしなくキスは続く。
一瞬の呼吸を許されたと思ったら、すぐに唇が寄せられ、角度を変えて深まっていった。
そんなことを何度も何度も繰り返しながら、なすすべもなく、唇を奪われ続ける。
長いようにも、あっという間にも思えるような時間が過ぎて行く。
このままどうなるのだろうと思ったそのとき、ちりり、と鈴の音が遠くで聞こえた気がした。
それがきっかけのように、唇が解放される。
きつく閉じていた瞼を開けると、視界いっぱいに広がるのは。
目を閉じたまま、コツンと額を合わせてきた彼の顔。
近すぎてピントは合わないけれど、微かに震えているように見える、長い睫毛。
お互いの乱れた呼吸と動悸が落ち着くのを待つように再び目を閉じれば、
今度は私の首元に彼の額が埋められる。
そのまま、強く抱きすくめられた。
熱いくらいの体温を感じながらも、茫然としたまま思考は動かない。
鎖骨あたりに彼のあたたかな息と、低い声が響く。
「ごめん、強引なことして。
あの後から、実家に戻ってもお前に会えないし、
なかなか話せなかったから。
久々に顔を見たら、ちょっと。冷静じゃいられなくなった」
あの後・・・。
ようやく回りだした頭で、私は思ったことを口にした。
「起…きてたの、あのとき」
「いや、寝てたよ。あれで目が覚めたけど」
「そう・・・ごめんね」
なんとなく謝ると、彼は笑いながら首元に埋めていた顔を上げ、
体を少し起こして私を見下ろしながら言った。
「なんで謝るの」
「勝手にキスしたから。でも今、私も勝手にキスされたけど」
彼の笑顔につられて笑いながら、私も軽く言ってみると。
笑顔がゆっくりと解かれ、真剣な表情で彼が言った。
「瑞季。俺、あのとき、ものすごく驚いた。
もちろんキスに驚いたんだけど、
瑞季にキスされたことが嬉しい自分にもっと驚いた。」
私はその言葉に目を見開き、彼の目を見つめた。
さっきとは違う。静かで、穏やかな目。
「あのキスに、俺の全部、持ってかれたと思った。」
そう言いながら、彼の人差し指が、私の唇をなぞる。
「それから、気づけばお前のことばっかり考えるようになってさ。
なんでキスくらいでこんな気持ちになるのかわからなくて、混乱した」
唇から人差し指が離れると、同じ手で頬を優しく撫でられる。
「でも、そのうちに。
『こんな気持ちになるのは、お前が俺の特別だからなんじゃないか』
って気づいたんだ。
そう思ったら、もうパズルのピースがピタっとハマったみたいに何もかも。
いろんなことが、すげえ納得できた。
ああ、これか、って。」
私の、『これ』って?と思った表情を見て、彼が笑った。
「今までの、全部。どんな彼女が出来ても、お前に会うと落ち着かなかった。
お前の彼氏の話を聞くとイヤな気持ちになってた。
それがなんでか、俺はずっとわかってなかったんだよ。
けど、これが理由だったんだって。」
「・・・でも、ずっと前から颯太、私のことは妹みたいなもんだって言ってたじゃない」
「気づくのが遅くなって、ごめん。もしかして俺のこと、あきらめようとした?」
私は無言でうなづくと、少し不安そうに彼が聞いてきた。
「で、どう。もう、諦めた?」
「・・・バカじゃないの。そんなにあっさりあきらめられるなら、
あのときも今も、キスしてない」
少し赤くなりながら、そう答えると。
どうして。
だって、彼は。
頭の中まで、痛いくらいに心臓の音が響いて何も考えられなくなった。
どうしたら、いいの。
震える手でどうにか、拳を作って、トン、と肩を叩いてもびくともしない。
もう一度叩こうとした拳はあっさり彼の手につかまり、
もともと力なく握られた指がすぐに、解けさせられた。
隙間のできたところから長い指がスルリと入りこみ、手のひらをくすぐられる。
くすぐったさで更に緩んだ私の指に、彼の指が絡んでくる。
そのまま、私の手の甲は畳に優しく押しつけられた。
その間も、せわしなくキスは続く。
一瞬の呼吸を許されたと思ったら、すぐに唇が寄せられ、角度を変えて深まっていった。
そんなことを何度も何度も繰り返しながら、なすすべもなく、唇を奪われ続ける。
長いようにも、あっという間にも思えるような時間が過ぎて行く。
このままどうなるのだろうと思ったそのとき、ちりり、と鈴の音が遠くで聞こえた気がした。
それがきっかけのように、唇が解放される。
きつく閉じていた瞼を開けると、視界いっぱいに広がるのは。
目を閉じたまま、コツンと額を合わせてきた彼の顔。
近すぎてピントは合わないけれど、微かに震えているように見える、長い睫毛。
お互いの乱れた呼吸と動悸が落ち着くのを待つように再び目を閉じれば、
今度は私の首元に彼の額が埋められる。
そのまま、強く抱きすくめられた。
熱いくらいの体温を感じながらも、茫然としたまま思考は動かない。
鎖骨あたりに彼のあたたかな息と、低い声が響く。
「ごめん、強引なことして。
あの後から、実家に戻ってもお前に会えないし、
なかなか話せなかったから。
久々に顔を見たら、ちょっと。冷静じゃいられなくなった」
あの後・・・。
ようやく回りだした頭で、私は思ったことを口にした。
「起…きてたの、あのとき」
「いや、寝てたよ。あれで目が覚めたけど」
「そう・・・ごめんね」
なんとなく謝ると、彼は笑いながら首元に埋めていた顔を上げ、
体を少し起こして私を見下ろしながら言った。
「なんで謝るの」
「勝手にキスしたから。でも今、私も勝手にキスされたけど」
彼の笑顔につられて笑いながら、私も軽く言ってみると。
笑顔がゆっくりと解かれ、真剣な表情で彼が言った。
「瑞季。俺、あのとき、ものすごく驚いた。
もちろんキスに驚いたんだけど、
瑞季にキスされたことが嬉しい自分にもっと驚いた。」
私はその言葉に目を見開き、彼の目を見つめた。
さっきとは違う。静かで、穏やかな目。
「あのキスに、俺の全部、持ってかれたと思った。」
そう言いながら、彼の人差し指が、私の唇をなぞる。
「それから、気づけばお前のことばっかり考えるようになってさ。
なんでキスくらいでこんな気持ちになるのかわからなくて、混乱した」
唇から人差し指が離れると、同じ手で頬を優しく撫でられる。
「でも、そのうちに。
『こんな気持ちになるのは、お前が俺の特別だからなんじゃないか』
って気づいたんだ。
そう思ったら、もうパズルのピースがピタっとハマったみたいに何もかも。
いろんなことが、すげえ納得できた。
ああ、これか、って。」
私の、『これ』って?と思った表情を見て、彼が笑った。
「今までの、全部。どんな彼女が出来ても、お前に会うと落ち着かなかった。
お前の彼氏の話を聞くとイヤな気持ちになってた。
それがなんでか、俺はずっとわかってなかったんだよ。
けど、これが理由だったんだって。」
「・・・でも、ずっと前から颯太、私のことは妹みたいなもんだって言ってたじゃない」
「気づくのが遅くなって、ごめん。もしかして俺のこと、あきらめようとした?」
私は無言でうなづくと、少し不安そうに彼が聞いてきた。
「で、どう。もう、諦めた?」
「・・・バカじゃないの。そんなにあっさりあきらめられるなら、
あのときも今も、キスしてない」
少し赤くなりながら、そう答えると。

