「………」

「………」


私と一條君は廊下を歩いています。ただ、女子の視線と陰口が痛く突き刺さります。


「や、やっと教室だぁ」

「…んじゃここからは別々だな。
休み時間にまた来る」


そう言うと直ぐ様行ってしまった。所詮はただの“フリ”。冷たいのも他人行儀なのも当たり前。なのに私は何でOKしてしまったんだろう。


「…おはよう……命」

「あ……ソウちゃん」


そう、私が恋をしているのは幼馴染みの一之瀬蒼汰【いちのせ そうた】だった。正直今会いたくなかった。


「お、おはようソウちゃん」

「命……その…さ。お前が一條と付き合ってるって本当なのか?」


グサッ


ソウちゃんの今にも泣き出しそうな顔。見てるのも辛い。でも…これはただの“フリ”だから本当の事、言っても良いよね?


「あ…あのね! これはその、一條君とはね。本当は何でも―――――」

「呼んだか命」


私達の後ろに立っていたのはさっき分かれた筈の一條君だった。最悪だ。


「……お前が一條か」

「…そうだけど……お前、もしかして命の彼氏か?」

「俺は命の幼馴染みだ」

火花バチバチの二人は向かい合って睨み合ったまま動かない。


「…おい、喧嘩するなら別の場所でしろよ」

「二人とも邪魔だよ~」


この声は…!


「綾子ちゃん! 日和ちゃん!」

「よっ、命」

「おはよう~、命ちゃん」


宮野 綾子【みやの あやこ】ちゃんと木下 日和【きのした ひより】も私の大切な幼馴染みだ。