きみのふいうち


暁くん、本当にいつもどおり……。
動揺しているのはわたしだけで、暁くんにとっては昨日の出来事なんて取るに足りないものだったのだろうか。

いつもどおりの暁くんにホッとしたのに、いつもどおりすぎる暁くんに不安になるなんて、わたしは本当にわがままだ。

はぁ、と心の中でため息をついた。

メールの受信ボックスの一番上にある、暁くんからのメール。
これか、と中を開くと、先程の言葉通り、至急に処理してほしいことが書かれていた。

今日の午後イチの会議で使うことになったらしい資料作成の依頼メールは、文面さえもいつもどおり。

添付資料をざっと確認して、それほど時間はかからなそうだと判断したわたしは、了解の旨を送るために返信作成ボタンをクリックした。

けれど、返信を待たずに暁くんが申し訳なさそうにわたしの名前を呼んできた。

「大丈夫そう?」
「うん、これくらいならすぐできると思う」
「よかった。じゃあ急がせて申し訳ないけど、お願いします」

了解です、と返事をすると、暁くんはふわりと笑顔を見せて、外回りに出掛けていった。