わたしの頭はもうパニック状態で、何をどう言葉にすればいいのかわからなくて、ひたすら驚いた顔をしていたと思う。

そんなわたしを見て、暁くんは自嘲のような笑みをこぼした。

「……ごめん、今さらこんなこと言われても困るよな」

「そうじゃない。そうじゃなくて……、暁くん、それ以前の問題だよ。彼女がいるのに何言ってるの?」

ようやく言葉になった声は、自分でもわかるくらい戸惑いに揺れていた。

「え……。花南さん、前もそんなこと言ってたけど、俺に彼女がいるなんて誰から聞いたの? 俺、もう随分彼女なんていないんだけど」

怪訝そうに顔をしかめてそう言った暁くんの言葉が、すぐにはのみ込めなかった。

「う、うそだよ!だって昨日も一緒にいたじゃん!」

「昨日? ……ああ、店で一緒にいた人のこと? 彼女じゃないよ」

あっさりとそう返されて瞠目する。

「昨日は大学の時代のサークル仲間との飲み会だったんだ。仕事が長引いて遅れて行ったら、たまたま同じように遅れてきた彼女と店に入るタイミングが重なっただけ」

まっすぐにわたしを見てそう説明する暁くんは、嘘をついているようには見えなかった。